【瀬戸内の美術館にて】
昨年、偶然インターネットで目にした迷路の写真に大きな衝撃を受けました。その迷路は、塩で描かれた緻密な迷路でとても美しい姿をしていましたが、衝撃を受けた最大の理由は迷路自体の模様の印象が、自分が1995年に描いた迷路と同一人物が描いたんじゃないかと思うほど似ていたからです。
すぐに制作した作家の方を調べ、実際に自分の目で作品を見てみたいと思っていた所、塩の迷路の制作者・山本基さんの展覧会が今年の2月から4月まで瀬戸内の海に面した小さな美術館で開催されるということを知り、最終日だった4月7日に付き合いの長い友人を誘って見に行ってきました。
当日は、山本基さん本人も会場に駆けつけ、展示されていたメインの作品「たゆたう庭」を来館者たちの手で崩し、崩した塩をそれぞれ海に還すという「海に還るプロジェクト」も行われていたので、観覧とあわせて参加してきました。 今回の展示は自分が最初に衝撃を受けた「迷宮」シリーズの作品ではなく、「うずまき模様」を描いた作品が中心でしたが、迷宮とうずまきの関連性やうずまきの構造の研究に関する作品など、自分にとっては勉強になることがとても多くあり、期待して観に行って本当に良かったと思える展覧会でした。
上に載せた写真が、塩で描かれたうずまき模様の作品「たゆたう庭」です。これを見て最初に出た言葉は「すごいなあ...」という一言でした。作品はその周囲を自由に歩きまわることができ、色々な方向から鑑賞しましたが、いくら見ていても見飽きることがなく、昨年、パソコンの画面越しに初めて見た塩の迷路の印象と同じように、とても美しいものとして存在していました。
作品の展示終了時刻を迎えた午後4時、美術館スタッフ、美術館の館長、山本基さんからのお話を聞いたあと、まずは山本基さん本人が作品を崩し、次に、展示室いっぱいに集まった来館者たちの手でも作品を崩していって、美術館から近いところにある瀬戸内の海にさらさらと塩を還してきました。
今日はもう4月9日なので2日前の出来事になりますが、今後の自分の作品への思考も深められた、忘れられない日となりそうです。
Rei Harakami/Cape