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【美術手帖・村上隆総力特集号を読んで】

先日発売された美術手帖を購入してきて、村上隆さんの特集記事を読み終えました。インタビュー記事やレポートが豊富で、その内容も濃く、読み応え十分の内容でした。村上さんを初めて知ったのは芸術新潮で、「東京芸大の日本画科で初めて博士号を取得した人物」として紹介された記事を読んだことが最初だったと記憶しています。

村上さんを知った当初は、以降に発表される作品を見るたびにほとんど理解出来ず、特に立体作品ではそれが顕著で、何故、このようなフィギュア作品(「Miss Ko2」)がアートという見方をされ、海外の有名オークションでも日本の現代美術の(当時の)最高落札額を更新するんだろう?と、不思議な思いでいましたが、平面作品を見るとすごくカラフルで、その制作手法などを知る内に好きなアーティストの1人となりました。

それで、今回の美術手帖を読み終えた感想ですが、この本を読んで、更に村上さんの魅力が増したと同時に、現在、自分が行っているコト(迷路の制作活動など)に対しても色々と考えさせられる事柄が多く書かれており、買って良かったなあと思える1冊でした。

発売されて間もない本ですし、無断で掲載内容を引用するのは問題がありますので、印象に残った中でも、特に印象に残った内容などを記憶を頼りに書いてみます。(記憶頼りで自分なりの言葉と解釈に置き換えてる部分もありますが、ご了承ください)

いちばん大切なコトは精神力である。自分(村上さん)だって、国内で色々と叩かれるとイヤな気分になるし、気が弱い人なら、凹んだりするコトもあるだろうけど、どんな時でも、ブレない精神構造を作るコトが大切である。無意味であると思われるコトを続けるしか、強靭なバネは作れない。無意味であるとかゴチャゴチャ言ったり迷ったししてる暇なんてないのだ。

上の言葉は、自分にとってはすごく納得が出来、また、勇気を貰えた言葉でした。強い精神力というのは、何の職業に限らず、生きていく上で重要な要素だと思います。年令を重ねるごとに、悪く表現すれば「図太さ」は身に付けておくほうが良いだろうし、それと同時に、見合う謙虚さも忘れずに持っていれば、それでいいんだと思います。とかく、メンタルが弱いとカラダの方まで壊すので、強い精神力は育んでいきたいです。最後の2行は、まさに、第三者から見た自分が行っている行為を言われているようで、「とにかく、やるしかないな」と、ハッパをかけられた気分になりました。

詰めペイント作業

上の言葉は、カイカイキキのスタジオ内で、平面作品を制作する際の工程を紹介した記事内にあった工程の1つを示す言葉です。この工程では、シルクスクリーンでインクを刷った後に生じるラインのエッジの乱れやインクのはみ出し、にじみなどを、細かい手作業で修正していくと書かれていましたが、もっとも根気と集中力を必要とする作業として紹介されていました。そして、この作業があるコトに依り、クオリティを保つコトが出来るとも書かれていました。

自分も「ラビリンス」を描く際に、表面上はスっと引いた1本の線に見えるラインでも、実際には2度3度と線のエッジをなぞり、フラットなラインとなるように修正を施しながら制作を行っているので、やはり作品の完成度を高めるには、根気と集中力を込めて、黙々と画面に向かうコトが重要なんだなと思いました。

一度ペイントし、表面を研磨後、再度ペイントする

これも村上さんの言葉ではなく、上に書きました「詰め作業」と同じく平面作品の制作手法を示しています。(作業の内容的には、読んで字の如くの作業になります)この工程の解説の中で衝撃的だったのは、一度塗って、研磨して、また塗るという2度手間の作業を経て「怨念」を込めていくと書かれていたコトでした。(実際の本に掲載されている解説文も「怨念」の文字だけ括弧書きになっています)

今回の記事では紹介しきれませんが、作品の持続性の話や(制作を続けるための根拠としての商業的行為→今までの日本(の美術界)ではタブー視されていた?)、村上さんが有言実行の人で、実際に結果を出してきている人だということ、あるいは、村上さんは「日本人として」海外に飛び出して戦っており、これは、現在の日本の現代美術界というのは、未だ成熟しておらず、海外の美術界との開きが多すぎるため、国内で勝負するのではなく、海外を主戦場にしているようなコト、また、村上さんに続く海外で通用するアーティストを育て、国として海外と渡り合えるような底上げをしようと個人の枠を超えた志を持ち、手弁当でGEISAIの開催も行っているというようなコトなど、村上隆という人物は、ものすごく意識が高く、自分にも人にも厳しく、反面、ものすごく優しい人なのではないかなあ?というようなコトを思いました。

以上、僕が自分なりに読み取ったなコトが多く書かれてますので、実際の本を読むと、また違った捉え方もあるかと思いますが、アンチ村上だという人も、アートや美術など興味がないという人も「ある職業の現場とそれを取り巻く環境」を覗くようなツモリで、是非、手にとって貰いたい1冊であります。(写真も豊富で、気軽に楽しく読めますよ)

次回は、記事の更新数が少ない「写真」か「建築」カテゴリーの記事を更新予定です。


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